上田義彦『Māter』

上田義彦『Māter』

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出版社:赤々舎

時を超えて、ふとそこに置かれたマガジンのような佇まいの本書には、月の光のもとで撮影された滝や渓谷と女性の身体とが、一対として現れます。漆黒の闇の奥に見える水流、たゆたう身体。生命の源として在るそれらと呼びかわすように、タイトルはラテン語の「Māter」(マーター、母・源、の意)から採られました。水と身体とが響きあうなかで、生命を育む地球と人とが重なる不思議。存在が分かちがたく連なる在りようを、『Māter』は密やかに映し出します。

1990年に撮影したアメリカインディアンの聖なる森「Quinault」、2011年に屋久島の森を撮った「Materia」、そして2017年の「林檎の木」に続くこのシリーズは、命の根源をたどる旅のなかにあります。「Materia」(木の幹)、「Water」(水)という言葉もまた「Māter」(母・源)から派生したものであり、シリーズは相互に関わりあいながら、世界の成り立ちに眼差しを注いでいるのです。


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