出版社:赤々舎
※表紙4種類のお届けはランダムとなります、ご了承下さい。
一見、私的な関係性や身の回りの風景を綴った写真には、光と影、存在と揺らぎが、静かにつよく同居する。目の前のいまに結晶している、目には見えない過去の時間、日々の錘や潜熱、未来への足どり。それらを眼差そうとして、写真が生まれた。
写された場所の多くは、人と建物が共に在るありふれた光景―建物は人が構築し人を護りつつ、同時に人を閉ざすものにも見える。その窓は、ひとつひとつに生活を灯しながら、一方で固有のものを覆い隠す。身体と環境、個と街とのあいだに生じる親愛と軋みを通して、写真は世界に向き合おうとする。そこに静かに写し出される痛みや憧憬は、時間を跨ぎ、個を超えて息づく。
白い表紙と剥き出しの背の表情に、複雑な糸が覗く。月と地球のように光と影は離れられず、その裏側への深い希求を湛えた初写真集。