大林直行『refrain』

大林直行『refrain』

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出版社:neat paper

本書は写真家 大林直行が自身の病の治療のため帰省していた故郷の山口県の海岸で撮影したもの。
陽が落ちるわずかな時間、氏はその淡い光と暗闇の狭間に立ちシャッターを切っていた。
そこはまさに自身の心を映し出しているような場所だったという。

長くかかった治療の期間に、県北の日本海や自身の実家もある県南の瀬戸内海のいくつかの海岸に繰り返し通うことで自身の感情を反芻していた。
揺れる心と共に辿り着いた写真からは、不安や葛藤のような何とも言えない空気が感じられる。
対象に自身を投影し見つめてきた前作の「おひか」とは反対に、今作では心身の状況の違いはもちろんのこと、より深い自己との対話がなされた内容となっている。

そこにある生と死が、相反するようで共存していた写真たち。
時間は違えども生と死を繰り返し脈々と今に繋いできた自然と人間。

迷いや揺らぎの中であっても圧倒される強さ(ここで強さと言うのが正しいのかはわからないが)が写ったプリント1枚1枚に向き合い、紡がれている。
自身の精神と生きるということに対峙した、今の大林氏にしか生み出せない写真集が完成した。


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