上田義彦『いつでも夢を』
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出版社:赤々舎
上田義彦が撮影したサントリーウーロン茶のシリーズは、今なお広告写真の金字塔です。静謐な光、大陸の風景とともに、そこでの人々の営みと存在が写し出されたイメージは、見る人の胸に響き、忘れがたい余韻を残しました。距離を越えて、生活の美しさや瞬間の豊かさが同じようにあることを、一枚一枚の写真は物語っていました。
1990年から2011年、中国が大きく変貌した時代に撮られたこのシリーズは、ロケのために、桂林、瀋陽、上海、大連など中国各地を時間をかけて巡り、その旅のなかで生まれたものです。偶発的に遭遇した光景や情景なども含まれており、旅で出会った人がそのまま広告の一枚に登場したり、土地の風景が写真を導いたりする在り方は、広告文化を育む当時の土壌を感じさせます。 上田は当時の中国の風景を「遥か感」という言葉で表現しています。北京空港から見た、広大な地にぼんやりと霞んだ空気の層が漂う独特な眺め、その時代を生きる人々の人間模様や美しい風景がインスピレーションとなり、数々の名シーンが生み出されました。
本書は、ウーロン茶の時系列の写真とともに、上田が旅の日々においてスナップした中国の光景を収め、共通する眼差しのなか、大きな時間と空間を湛える一冊です。