ヤニス ・バルファキス『世界牛魔人』
早川健治 訳
出版社 : 那須里山舎
"世界を覆う陰鬱な空にバルファキスが描いて見せた「キャピタリズム歴史絵巻」
この炯眼は無視できない このリーダビリティには逆らえない"―ブレイディみかこ
世界的反緊縮経済運動のリーダー、ヤニス・バルファキスの思想的集大成、待望の翻訳完成。邦訳特典付録として、伝説の知識人ノーム・チョムスキーとの「ニューヨーク対談」、そして特別インタビュー「バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ」の二編を収録。
付録のインタビューでバルファキスは「コロナパンデミック危機は、2008年リーマン金融危機と切り離して考えることはできず、2008年危機の延長線上で考えるべきだ」と主張する。
世界資本主義史において戦後アメリカという帝国は、世界中の富を吸い上げ、それを世界中に循環させる中で肥え太るという、前代未聞の新システムつくりあげた。バルファキスはこのシステムをギリシア神話に登場する牛頭人身の怪人、ミノタウロスに喩えて鋭利に分析する。「牛魔人システム」が崩壊した2008年以後も、金融緩和により金融部門と実体経済の乖離が進み、極々一部の人々に金融資本主義の利益が集中し、超格差拡大社会が実現してしまっている。バルファキスによると、コロナ危機はこのトレンドを加速させ、資本主義を金融資本主義から「テクノ封建主義」へ変質させている。
本書ではこうした分析が、経済理論のみならず古代ギリシア神話や近代文学、哲学思想やサブカルチャーに至るまで幅広い表現を用いて展開されている。現在の世界の富の偏在と格差・貧困の根本原因を理解し、そしてコロナ後の社会を民主的に再生させるにあたって、時間の試練にも十分に耐えうるような洗練された視座を提供してくれる一冊である。(出版社より)