Pierrot『RUMAH RUBAH』

Pierrot『RUMAH RUBAH』

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出版社:EQUATOR INSTITUTE

インドネシアとパリを拠点に活動するフォトグラファー、ピエロ(Pierrot)の作品集。

大地と空のあいだ、チーク材の温もりと光が満ちる場所に佇む「ルマ・ ルバ(Rumah Rubah)」は、バリ島ペレレナンの静かな 高台に息づく安らぎの邸宅である「Maison Kitsuné」の共同設立者であるジルダ・ロアエック(Gildas Loaëc)の住まいとして、バリを中心に世界的なデザイン誌でも高く評価される建築家として知られる「Studio Jencquel 」の建築家マクシミリアン・ジェンクル(Maximilian Jencquel)は、この邸宅を日本的な節度とバリの精神が穏やかに響き合う空間として構想した。 地元産のチーク材を用いて築かれ、樹齢百年を超えるボ ダイ樹(Bodhi)やプライ(Pulai)が茂る4,000平方メートルの熱帯庭園に囲まれた「ルマ・ ルバ」は、まるでひとつの生命体のように息づく。風と光を自在に巡らせる独特の屋根の構造、そして太陽光発電や雨水回収システムがこの家の暮らしを静かに支えている。建築の一つひとつの所作には、自然や時間、そして職人の技への深い敬意が込められている。 写真家ピエロがモノクロームで捉えようとしたのは、まさにこの静かな調和である。時を超えた美意識と、被写体と作者のあいだに流れる感情の空間を映し出す表現で知られる作者のレンズは、「ルマ・ ルバ」を瞑想的な風景へと導いていく。影と光が溶け合う瞬間をとらえたイメージは、静けさの中にある豊かな表情へと見る人を誘う。

全112ページにわたり、アーカイブ品質の用紙に印刷された本書は、邸宅の親密な瞬間を連なりとして描き出す。吹き抜け空間に伸びる樹齢百年のフランジパニの大樹、夕暮れどきにプールの水面へ映り込む光、オーダーメイドのチーク材家具が見せる彫刻のような佇まい、そして庭の奥にひっそりと佇むBale Kulkulの塔や川辺の寺院。それは単なる記録ではなく、空間の魅力を感覚的に味わえる一冊に仕上げられている。贅沢なテキスタイル地のハードカバーに繊細なエンボス加工を施し、建築家マクシミリアン・ジェンクル本人の文章を序文として収録したこの作品集は、その被写体が 宿す哲学をさらに広げていく。精密なオフセット印刷で作られた本書は、邸宅に込められた丁寧さと意図をそのまま映し出している。単なるビジュアルブックを超え、建築と感情、そして“ゆっくりと生きる”という美学を探る静かな瞑想のような一冊である。(ハードカバー/200 x 240 mm/112ページ)


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