
赤染晶子『初子さん』
出版社:palmbooks
あんた、きっとうまいこといくで。
あんパンとクリームパンしか売っていないパン屋の二階で、
初子さんは今日もひとりミシンを踏む。
文學界新人賞受賞デビュー作「初子さん」
傑作「うつつ・うつら」に
単行本初収録「まっ茶小路旅行店」を加えた
著者の原点となる小説集。
子供の頃、一枚の布が人のからだを待つ洋服となるのに魅せられ、洋裁の職人となった初子さん。夢を叶えたはずなのに、かわりばえしない毎日がどうして、こんなにこたえるのだろう。ーー「初子さん」
わて、実はパリジェンヌですねん。京都の古い劇場で赤い振袖姿で漫談をするマドモアゼル鶴子。彼女をおびやかすのは沈黙の客席か、階下の映画館から聞こえてくる女の悲鳴か、言葉を覚える九官鳥か。ーー「うつつ・うつら」
路地にある社員三人の旅行代理店に勤める咲嬉子は、世界中の危険を知りながら今日も世界平和を装う。旅の果てで出会うのは蜃気楼か。すりガラスの窓の向こうに見える日常が蜃気楼なのか。ーー「まっ茶小路旅行店」
生きることのままならなさを切実に、抜群のユーモアをもって描きだし、
言葉によって世界をかたちづくり、語りと現実のあわいを問う
『じゃむパンの日』の著者の原点にして、そのすべてが詰まった小説集。(出版社より)